妊産婦のための食生活指針

妊娠前から、健康なからだ作りを


妊娠前に、やせすぎ、肥満はありませんか。健康な子どもを生み育てるためには、妊娠前からバランス良い食事と適正な体重を目指しましょう。

妊娠前の体格が「低体重(やせ)」や「ふつう」であった女性で、妊娠中の体重増加が7㎏未満の場合には、低出生体重児を出産するリスクが有意に高いことが報告されています。 また、過度のダイエットは、月経不順や無月経の卵巣機能低下を引き起こすおそれもあるので注意が必要です。

一方、肥満の人が妊娠すると、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などを発症するリスクが高まります。また、緊急帝王切開、分娩後大量出血等の異常も多くなります。

体格の計算については「体重コントロール」のページを参考にどうぞ

「主食」を中心に、エネルギーをしっかりと


妊娠・授乳期は、食事のバランスや活動量に気を配り、食事量を調節しましょう。 また体重の変化も確認しましょう。

この時期は、母体のエネルギー消費量に加えて、胎児の発育のためのエネルギー量を確保する必要があります。
付加量は、妊娠初期(16週未満)で+50kcal、中期(16~28週未満)で+250kcal、末期(28週以降)で+500kcalです。
油脂の増加に気をつけるためにも、炭水化物の供給源となる主食をしっかり食べることが望まれます。

バランスのよい食事については「食事バランスガイド」のページを参考にどうぞ

不足しがちなビタミン・ミネラルを、「副菜」でたっぷりと


緑黄色野菜を積極的に食べて葉酸などを摂取しましょう。特に妊娠を計画していたり、妊娠初期の人には神経管閉鎖障害発症のリスク低減のために、葉酸の栄養機能食品を利用することも勧められます。

野菜、きのこ、いも、海藻を主材料とする「副菜」は、妊娠初期では1日5~6皿、妊娠中期及び末期、授乳期では6~7皿が目安となります。生より、加熱調理することで沢山の量を食べやすくなります。

葉酸については「葉酸摂取について」のページを参考にどうぞ

からだづくりの基礎となる「主菜」は適量を


肉、魚、卵、大豆料理はバランスよくとりましょう。赤身の肉や魚などを上手に取り入れて、貧血を防ぎましょう。ただし、妊娠初期にはビタミンAの過剰摂取に気をつけて。

妊娠期は、胎児の発育に必要とされる体たんぱく質の蓄積量を確保するため、たんぱく質が必要になります。特に、体たんぱく質の蓄積量が増加する妊娠中期と後期ではたんぱく質付加量が+10g(卵1個や納豆1パック程度)となります

詳しくは「貧血対策」のページを参考にどうぞ

牛乳・乳製品などの多様な食品を組み合わせて、カルシウムを十分に


妊娠期・授乳期には、必要とされる量のカルシウムが摂取できるように、偏りのない食習慣を確立しましょう。

妊娠期には、カルシウムの吸収率が上昇することから、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などにより胎盤機能低下がある場合を除き、カルシウムの負荷は必要ないとされています。
しかし、日本人の平均的なカルシウム摂取量は少なく、目安量を下回っているので、日頃から意識的にカルシウムの摂取に努める必要があります。

カルシウムは、牛乳・乳製品、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、小魚類、海藻・乾物などに多く含まれるので、上手に組み合わせてとるようにしましょう。

妊娠中の体重増加は、お母さんと赤ちゃんにとって望ましい量に


体重の増え方は順調ですか。望ましい体重増加は、妊娠前の体型によっても異なります。

詳しくは 「体重コントロール」 のページへ

母乳育児も、バランスのよい食生活のなかで


母乳育児はお母さんにも赤ちゃんにも最良の方法です。バランスのよい食生活で、母乳育児を継続しましょう。

母乳育児は、栄養・免疫・心理面においてもその意義は大きいとされています。
母乳が十分に分泌されるためには、エネルギー量とともに、たんぱく質、カルシウム、鉄などの必要量が確保された食事になるように配慮しましょう。

たばことお酒の害から赤ちゃんを守りましょう


妊娠・授乳中の喫煙、受動喫煙、飲酒は、胎児や乳児の発育、母乳分泌に影響を与えます。禁煙、禁酒に努め、周囲にも協力を求めましょう。

喫煙者の妊婦は非喫煙者の妊婦に比べ、子どもの出生体重は平均200g 少なく、低出生体重児が産まれる頻度は約2倍高いと報告されています。
妊婦の喫煙により、自然流産の発生率は約2倍、早産率は約1.5倍、周産期死亡率は約1.4倍高くなるといわれています。
また、非喫煙の両親に比べ、両親が喫煙する家庭の小児呼吸器疾患の発症頻度は約3倍。 さらに、乳児突然死症候群(SIDS)の発症頻度は、約5倍の高率であることが明らかにされています。

一方、妊娠期にアルコールを常用すると、知能障害、発育障害を伴う胎児性アルコール症候群の子どもが生まれる可能性が高まります。我が国の研究では、1~2万人の出生に1人と考えられています。

お母さんと赤ちゃんの健やかな毎日は、からだと心にゆとりのある生活から生まれます


赤ちゃんや家族との暮らしを楽しんだり、毎日の食事を楽しむことは、体と心の健康につながります。